日本の心を伝える
私は長年松下幸之助翁の理念を伝えること、そして陽転思考に基づく人間教育を行ってきましたが、実はもう一つ自分自身のライフワークにしていることが「日本の心」をみなさんにお伝えすることです。
思想哲学を高校生の時から研究する中で、東洋の哲学、中でも日本の思想に深く傾倒していきました。
日本は東洋の島国で、西欧とは文化的背景が全く違います。でも古代からの日本の精神文化を見つめてみると、とても素晴らしい思想が息づいていることがわかります。
日本は神道と仏教そして儒教が混在した「武士道」の国といわれていますが、世界的にもとてもユニークな思想を持っています。
私はかつて10年間にわたり多賀創世塾を主宰する中で、日本神道を研究し伊勢神宮にも数多くの人たちとご一緒しました。
また若手の経営者を中心に志学塾という塾を10年間開催し、全国100カ所の日本の聖人賢人の足跡を訪ね歩きました。
そしてまた8年間黎明塾を開き、日本の思想についてみなさんにお話ししてきました。
日本はこれからかつてのように経済大国になることは二度とないでしょう。
しかし世界に様々な軋轢がある中、世界の中で日本が果たす役割は益々大きくなると思います。
ただ、悲しいかな私たちは、日本の先人達の生き様をどこかに捨ててきてしまったのです。
うっかりすると、今すでに松下幸之助翁を知らない子ども達がたくさん出てきています。
私がかつて、ある女子大で日本文化について話をしていた時に「天照大神」と黒板に書いたところ、一人の女の学生が、これを「てんてるだいじん」と読んだのです。そうすると、隣の席に座っていた学生が、肘でその女の学生の脇腹を突き、「違うわよ!これは『てんしょうだいじん』と読むの!!!」と言ったのです。
私は口をあんぐりと開けてしまいましたが、これはこの子たちが悪いのではありません。誰も教えないのですから知らないのも当然です。
私は日本の心と歴史を、絵巻物を見るように、またドラマを見るように面白く伝えていきたいと思います。
これからの日本に生きる人々に対し、いかに日本という国が素晴らしい国であるか、そしていかに清々しい心を持った人たちが生きていたのかということを、精一杯伝えていきたいと思っています。
小田全宏