老いて学べば

今日は朝から彦根に帰ったのですが、実は午前中母の講座を受けていたのであります。
今母は90歳でかなり足も弱りよぼよぼなのですが、それでも毎月講義をしているのです。

母は昔中学校の教師をしていて最後は教頭で終わりました。その間彦根の芸術賞の選考委員を務めたり、とにかくいろいろな活動をしていました。

今何を講義しているかというと、あの井伊直弼が生前に詠んだ歌集の解説をこの数年ずっと市民講座のような形でやっているのです。

井伊直弼というと、どうしても幕末期に天皇の勅許を待たず日本を開国したために多くの人たちに恨まれ、それをおさえるために「安政の大獄」を行い、多くの志士たちを殺したとして、世の中的にはかなりの悪役ぶりです。

私の郷里の英雄であり、その実態は世の中で言われているものとは全く違います。そのあたりのことは私がいま執筆しています「ジャパンスピリット」でばっちり書いていますが、この井伊直弼が生前1300首を超える和歌を詠んでいるのです。
本当に大変な文人なのですね。
この直弼の歌集の名前が「柳のしづく」というのですが、これをずっとみんなの前で母が解説しているのです。

正直いって、僕は全く読めません。
よくこんな字が読めるなと思うのですが、それを一首一首丁寧に読み解いているのです。
来ているのは十数人なのですが、みなさん熱心で何年も通っているというのです。
一つの歌の意味がわかるとみなさん「ほーっ」といって感嘆し喜んでいます。
年齢はどうでしょう。ほとんどの人が70歳以上で85歳以上の人も数人います。
そんな人たちが、今も勉強しているというのは素敵だなと思いました。
考えてみると母は昔よくよく講演したり講義をしたりしていたのは知っていたのですが、今日始めて母の話を聞きました。
それにしても2時間話し続けるというのも大変だなあと思うのですが、90歳の母でもこんなにしているのだから、僕など「くたびれた!」などと言っていてはいけないと思ったものです。

家に帰って、かつて母が仏画の個展をした時の写真を見ていたのですが、僕が「この何十枚の絵は誰の所に行っているのかわかる?」と聞きましたら、即座に「知らん」と答えましたので、いささかがっかりしました。


もしわかればすべての絵を買い戻したいくらいなのですが、まあそれは無理なようです。
僕には残念ながら母の絵の才能はあんまり遺伝しなかったようですが、もしかしたら還暦あたりから突然絵の才能が目覚めるかもしれません。
そのときはみなさんに「格安!」でお分けしますので楽しみにしていてください。
 
いずれにしてもみなさん、生涯学び続けようではありませんか。
かつて幕末の儒学者佐藤一斎はこう言っています。
 
「少にして学べば壮にして為すあり
壮にして学べば老いて衰えず
老いて学べば死して朽ちず」
 
というわけで明日も良き日に
 
ごきげんよう!